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私の中のあなた

評価 : ★★★★☆

小児白血病の映画。いわゆる難病もの。主人公はアナという女の子で、病気なのは姉のケイト。ケイトは小さな頃に白血病であることが発覚する。両親は肉親に骨髄の型が一致する者がいないか探すが、弟ジェシーや両親も含め適合者がいない。そこで母サラ(キャメロン・ディアス)は体外受精でケイトと骨髄の型が一致する三人目の子どもを生むことを決断する。そうして生まれたアナだが、いよいよケイトの病状が思わしくなくなり、姉のために腎臓移植を両親に迫られることになった。そこで彼女は奇策に出る。

セカチュー見てないけど、セカチューよりも65535倍良いんじゃないかと思う。感動した。

まずぐっと来たのが、割と最初の方の、アナが母親サラを訴えるためにやり手弁護士キャンベル・アレクサンダーのところを訪ねるシーン。多分普通の人はこの辺では泣かないと思うんだけど、アナはそこで過去に自分が姉のためにさせられてきた処置の数々を弁護士に話す。G-CSF(骨髄を無理にオーバーワークさせて血液をつくらせる薬剤)をうたれて血小板を提供させられたりとか、骨髄移植のドナーにさせられたりとか。僕自身ががん患者で、G-CSFは注射されまくったし、末梢血幹細胞を採取するために足の付け根から大動脈にカテーテルを挿入されて過ごした経験があるだけに、こんなにちっちゃい子が姉のためとはいえ、辛い思いをさせられてきたのかと思うといきなり涙が出てしまった。

アナだけでなく、アナの兄ジェシー(ケイトの弟)も、小さい頃から寂しい思いをする。両親はいつもケイトのことばかり考えており、失語症のジェシーはろくにかまってもらえず、施設に入れられてしまう。父ブライアンが施設に入るようにジェシーを説得するんだけど、ここでも泣いてしまった。別に自分は施設に入れられたり親に大事にされなかった経験があるわけじゃないんだけど、ちっちゃい子にとって親からあまりかまわれなかったり施設に入れられたりするのはさぞ辛いだろうなぁと思って。

ケイトの辛さもとてもよく描いてあって、自分のせいで家族に負担がいっていることをとても気に病んでいる。母サラはやり手の弁護士だったんだけど、ケイトの看病をするために仕事を辞めてしまったし、弟と妹にも負担をかけている。そして辛い治療。抗がん剤の副作用で髪の毛が抜け、嘔吐をする。日本のがんを扱った映画はこの辺適当にお茶を濁しがちなんだけど、治療の様子もリアル。ケイトには同じ白血病患者の彼氏ができるんだけど、彼とキスしたあと「抗がん剤の味がする」っていう台詞もヒジョーにリアル。抗がん剤は点滴投与されても、口腔にいやーな味が伝わってくるのです。治療思い出して結構辛かった。

アナはやり手弁護士を雇って元やり手弁護士である母サラと法廷で対決するのだけど、裁判を通じてなぜアナがこんな行動に出たのかが徐々に明らかになっていく。アナは良い子だし、自分のために姉を殺すことを望んでいたわけではなかった。ジェシー、父のブライアンもだんだんとケイトの死を受け入れていき、最後にはサラも現実を受け入れる。そしてケイトは安らかに息を引き取る。ケイトは死にたがっていたのだ。

元がん患者的にすごく共感しながら見ることができたし、劇場では一人だったけど泣きまくってしまった。ただ気になる点もないわけじゃなくて、この映画、『きみに読む物語』の監督が撮ってるらしいんですけど、あの映画と同じで、白人中心の世界が広がっていて、「白人による、白人の、白人のための映画」臭がぷんぷんしてた。黒人は出てくるけど医療スタッフとかそういうのばっかり。そういうのってなんか違うんじゃないかな。